キーワードは「感情」、noteはマーケティングにどんな変化を起こすのか【第10回 池田紀行のマーケ飯】
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キーワードは「感情」、noteはマーケティングにどんな変化を起こすのか【第10回 池田紀行のマーケ飯】

代表の池田(@ikedanoriyuki)が、さまざまなフィールドの第一線で活躍されている方とご飯を食べながらカジュアルに議論する企画「マーケ飯」。

第10回のゲストは、note株式会社でユーザーコミュニケーションを担当している金子智美さん(https://note.com/kanetomo)。noteはもちろん、各SNSにおいて「かねとも」の愛称で親しまれている金子さんとともに議論する今回のテーマは「noteがマーケティングにもたらす感情的な価値とは」です。

クリエイターが文章・画像・音声・動画を投稿して、ユーザーがそのコンテンツを楽しんで応援できるメディアプラットフォーム「note」。サービス開始7年で会員登録者数は約380万人・総記事数は約1,500万件(2021年3月時点)という一大プラットフォームへと成長し、法人によるビジネス利用もますます広がっています。そんなnoteがマーケティングにどんな影響を与えるのか? noteで行う情報発信との向き合い方とは? マーケターだけでなく、企業の広報担当者も必見の熱い議論が展開されました!

note株式会社 PRチーム ユーザーコミュニケーション担当 金子智美
エデルマン・ジャパンにてPRを経験した後、2009年に当時ネイバージャパン(現:LINE)入社。SNS運用やコミュニティ企画、社内のガイドライン作成などを担当。2020年4月にnote株式会社に入社し、PRチームとしてユーザーコミュニケーション全般を担当。
株式会社トライバルメディアハウス 代表取締役社長 池田 紀行
1973年 横浜出身。ビジネスコンサルティングファーム、マーケティングコンサルタント、クチコミマーケティング研究所所長、バイラルマーケティング専業会社代表を経て現職。大手クライアントのソーシャルメディアマーケティングや熱狂ブランド戦略を支援する。日本マーケティング協会マーケティングマスターコース、宣伝会議講師。『キズナのマーケティング』『ソーシャルインフルエンス』(アスキー新書)、『ソーシャルメディアマーケター美咲』(翔泳社)、『次世代共創マーケティング』(SBクリエイティブ)など著書・共著書多数。鎌倉稲村ヶ崎在住。

「わたしのすべて」が表現できるnoteというプラットフォーム

池田:本日はよろしくお願いします! 大好きなnoteについてかねともさんとお話しできるのがすごくうれしいです。

金子:こちらこそよろしくお願いします! 私も今日が楽しみで、お話ししたいことをメモしてきました(笑)。

池田:ありがとうございます! さっそくですが、noteについていろいろ教えてください。ズバリ、いま何を目指していてその目標を達成するためにかねともさんはどんな役割を担っているんでしょうか?

金子:noteのミッションは「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」こと。この「だれもが」の対象は全人類なので、PRチームの仕事はこのミッションをだれもが理解できるように伝えることです。あらゆるステークホルダーがいるので、「つまり言いたいのはこういうこと」とそれぞれの人にとって分かりやすく体現するように心がけています。

「創作をする」と表現すると、「私に創作なんて……」と言う人もいるかもしれませんが、書く・話すなどどんな人でも無意識のうちに創作をしているんですよね。しかも、現代は立場や年齢問わず誰もが当たり前のように情報や自分の好きなことを発信できる時代。多くの人がインターネット上にアカウントという分身があって、その分身がネットに住んでいる状況だと仮定できます。いまはサービスごとにバラバラにアカウントが存在していますが、今後はどこの誰か・何をしている人かといった「ここさえ見ればその人のことが分かる場所」が求められてくると思うんですよね。

池田:そこでnoteの出番、というわけですね。

金子:そうなんです。いまはいろいろなSNSがありますが、その人のことをいろんな側面から見ることができるプラットフォームって案外思い浮かばないんですよね。例えば、Twitterは一回の投稿で書ける文字数に限りがあるので、高頻度で瞬間的な一面を出しやすいですが、自分のことを深く表現するのは難しい。

note入社前に、どこで自分の頭の中のことをじっくり表現しよう……と思っていたとき、1ユーザーとしてnoteを見てありのままをさらけだしてる感や「ニッチな愛も大好き」「こういうことは悲しい」というその人らしさ・人間らしさ・生々しさを感じて、これはいまの自分にぴったりだと確信しました。肩書きじゃない等身大の自分(自己紹介)を伝えられる場所がnoteだな、と。それにこれからは、もっと一人ひとりが自分の感情をありのまま表現したUGC(※1)が生まれる場所が求められていると感じているんです。

※1 User Generated Contentの略で、ユーザーが生成したコンテンツのこと。ソーシャルメディアやクチコミサイトへの投稿などが含まれる。

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池田:大きなカテゴリーで捉えると、noteもウェブログ(ブログ)の一種だと思うんです。noteはかなり後発なのにも関わらず、気づいたらこの数年でMAUは6,300万を突破しているし、すでに一つの文化圏を形成しています。ブログとnoteって何が違うんでしょうか?

金子:違いの一つはブログ名の有無でしょうか。ブログは自分のページに「◯◯ blog」などのブログ名をつけますが、noteにはないですよね。アカウント名をブログのようにしている方もいらっしゃいますが、あくまで自分自身が中心にある。名前をつけなくていいということは、その名前に創作内容が縛られることなく、「私自身が考えるあらゆることが詰まっています」という状態になっている。

池田:たしかに、ブログのタイトルのようなものがないことは僕もアカウントを開設するときに少し不安でした。でも、だからこそマーケティングのテーマだけでなく、働き方や鎌倉移住、養子縁組に関してなどテーマの垣根なく発信できて、「池田紀行の想いや考え」が詰まったアカウントになっているという実感があります。

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金子:そうですね。あとは一般的なバナー広告がないことや、ランキングがないことでPVのような数値を意識しすぎることなく、クリエイターの方には「自分が本当に書きたいことを書く」という気持ちになってもらえているのかもしれません。

池田:とはいえ投稿する側として一番辛いのは、ネガティブコメントがつくこと以上に読まれないことなんじゃないかと思うんです。

金子:逆に、私は読者は一人でもいいと思っています。まず自分の創作を最初に読むのは自分ですよね。書いて、プレビューなどで読み返して、脳内が整理されたり気持ちが落ち着いたり納得したりできる。この投稿を読むのが唯一自分だけであったとしても、「自分のために書く」という使い道でもいいと思います。

池田:良いものがより多くの人に読まれる・普通のものは読まれない、がソーシャル時代の本質だと思っていたんですが、なるほど「自分のために」であっても良いと。それなら創作する人の気持ちもかなり楽になりますね。それに、SNSでは誰もが裸のような状態だから、脚色できないしごまかしも効かない。

金子自分の投稿が有益かどうかって、実は本人が一番分かっていないんです。自分にとっては当たり前すぎて書かないようなことが、実は誰かの役に立つこともある。noteの「お題」(※2)を見てると、何気ない投稿が自分や他ユーザーの学びになっている瞬間をよく見かけますし、発見も多いですよ。たとえば、「私の仕事」とか「私の朝ごはん」といったお題について書いているnoteから「なるほど、こういうやり方があるのか」と私自身もタメになった経験があって。

明日の自分が勇気づけられることを有益とするならば、どんな人のどんな創作も人のためになるはずです。note=エモいプラットフォームと言われることが多いですが、それはちょっと違うと思っていて。書きたいことを書けばいいんです。そしてその投稿が、たった一人でも、誰かの心を少し動かすことができればそれだけで十分、という場だと捉えてほしいんですよね

※2 note記事にハッシュタグを付けて投稿することで誰でも参加できるnote独自の企画。募集中のお題やコンテストは、トップページの「募集中」タブに掲載されており、投稿テーマのヒントとして活用できる。

生活者は非合理的な買い物をする

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池田:noteで生まれるUGCには新しい可能性がありそうですね。僕はブログというCGM(※3)の可能性を感じてトライバルを起業したくらいですから、UGCの力を信じています。人の消費行動は非合理的なので、どんなUGCに触れるかによって意識や態度や行動が(合理的ではない方向へ)変化することがよくあります。

例えば、商品Aについて調べているとき、たまたまあるnoteが目に入ったとします。知らない誰かの投稿だったけれど、並々ならぬ情熱をもって、いかにこの商品が素晴らしいかについて詳細に書かれている。対してレビューサイトにはネガティブな評価も一定数ある。そうなったとき、レビューの平均値ではなく、たった一人の熱い意見に心動かされることってありますよね。

いまは、信用される順番が知人・友人のクチコミ→ネットのクチコミ→企業の公式サイトとなっている時代なので、誰が書いているかという「Who」の力は重要です。でも、たとえ知人・友人であっても(このWhoは)専門家ではないと考え直し、知らない人による(レビューなどの)「What」情報を漁るケースが出てくる。

一方で、付き合いが長い友人のおすすめは、その人の文脈を理解しているから信じられる、みたいにさまざまな視点のクチコミを行ったり来たりする。商品やサービスそのものの客観的な良し悪しじゃなくて、判断材料が時と場合とで変わる高度な生き物が人間です。

そんな状況下において、noteのおもしろいところは「Who」と「What」の両方が伝わるUGCが生まれている点なのかもしれません。

※3 Consumer Generated Mediaの略。消費者が作成したコンテンツ(UGC)によって生成されるメディアのこと。UGCとほぼ同義。2000年代、米国ではUGC、日本ではCGMという違う言葉で広まった(現在は、ほぼUGCに一本化されている)。

金子:「Look at This」がTwitter、「Look at Me」がInstagramだとしたら、noteは「Look at Story」なのかなと考えています。何かをおすすめするうえで、ストーリーで語られると説得力が生まれてより心に響きますよね。

池田:たしかに、レビューにはストーリー性はないですね。noteの場合はWhatから入って、文脈の中でWho(創作した人のパーソナリティ)がほとばしってくるから説得力と物語を感じて心が揺さぶられ、その結果、思いがけない出会いをもたらしてくれるという。

金子:noteはページまたぎや広告がなくコンテンツに没頭できる世界観があるので、それもストーリー語りに適していると思います。PV数などに左右されず本心・本音が書きやすい構造だから、対象に対するレビューにも忖度がないんです。だからといって、過激な言葉で書いたり他者を煽ったりすることも割と少ない。ランキングがないことが、ここでも良い方向に影響を与えています。

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池田:なるほど。だとするとnoteというプラットフォームは、マーケターにとって自分たちのブランドや商品について、生活者がどのように感じているのかという文脈やストーリーを汲み取ることができる場でもあると言えそうです。フォロワーが数十人しかいなくても、その記事を見た人の心をすでに何度も動かしているかもしれない。

僕のようにマーケティングの世界に長くいると、「多くの人を何人以上ととらえるか」と聞かれると、「数十万人以上」のような大きい数字で考えてしまう。でも本当は、たとえ30人の役にしか立っていなかったとしても、それだって十分尊いことなんですよね。それに、30人にしか読まれていない記事であっても、記事の総量が増えて最終的に延べ300万人分のPV数になっていたらすごい。その視点は僕にはなかったですね。

効果だけではなく“感情”にも向き合うべき時代

池田:noteを自社のオウンドメディアとして利用できる「note pro」も順調に利用企業数が増えていますよね。中長期的に顧客に好きになってもらうことも含めたブランディングといますぐ客を獲得するために行うセールスプロモーションは対極ですが、そのブランディング寄りの活動に寄与するのがnote proを通じた情報発信だと思うんです。

あらゆるものがコモディティ化している現代は、機能的な便益にほとんど差がなくなっちゃった状態。そうすると、生活者の判断基準は商品の品質だけでなく、もはや「好き」か「嫌い」かでの選択になると僕は思っています。

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100人が1個ずつ買うことで合計100個売れた場合と、10人が8個ずつ買うことで合計80個売れた場合を考えたとき、短期的な結果で見るなら前者の100個の方が目先の売上としてはいい結果と言えるけれど、持続可能性でいうと絶対に後者ですよね。

来年も10人が8個買うとは限らないですが、買う人が0人になることはまずないだろうし、8個も買ってくれている=好意をもってくれているはずだからまだ買ったことがない人に推奨してくれる可能性もあります。

金子:そういったコモディティ化の状況を考えると、「なぜやっているか」に共感してもらうことが今後もっと重要になっていくんだろうなと思います。「売上を上げること」と「好いてもらうこと」のバランスを保つことが大切なんじゃないでしょうか。

池田:100人が1個ずつ買った瞬間的な売上100個に対し、今後も買い続けてくれるであろう熱狂的な人が買ってくれた売上が20個じゃ話にならないのは分かります。瞬間風速的な100個に対して、持続可能な売上が80個くらいないと議論にならない、ということはもちろん理解しているんです。

とはいえ、例えばビールの場合、どれだけ熱狂的な人でも一人の肝臓には限界があるから、買ってもらえる本数にも当然限界がある。そこが企業にとって悩ましいポイントですよね。もちろん、AかBかじゃなく両方大事で、要はバランスってことなんでしょうけれども……。

金子:私も前職のTwitterアカウントで「中の人」をやっていたとき、ユーザーから好いてもらうことの大切さを他部署に理解してもらいたかったのですが、熱狂してくれているたった数人の意義を説明できなくて悔しかった経験をしました。

「私たちの投稿にいいねしてくれた人のプロフィールを見て、(その熱狂具合を)想像してください!」としか表現できなくて……。そのときに、少数の熱狂的な人の価値を知ってもらうためには、まず数値の話ができなければいけないと気づいたんです。「測れないからしょうがない」と諦めるんじゃなくて、測れないことを重要視したい人ほど測ることに向き合わなければいけない。

池田:それは名言ですね! ソーシャルメディア時代では、ユーザーのソーシャルメディア上の感情的態度の累積が企業やブランドのレピュテーション(評判)になります。企業が正しいこと・良いとされることをやるのは当たり前なので、そこからいかに多くのユーザー・非ユーザーを仲間にできるかが肝ですね。

金子:そうですね。それにユーザーに対してもですが、社内においてもその重要性は強く感じますよね……!

池田:それは僕もよく実感しています(笑)。相手が上司なのであれば、上司が求めることに合わせてコミュニケーションできなくちゃいけない。分かりやすいのはやはり数字。定量化はあきらめちゃいけませんね。

企業は持続可能である状態を維持しなければいけないけれど、どうしても年度の予算を達成することが優先されてしまいます。短期的・中長期的な施策のバランスが必要ですよね。

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金子:noteで生まれるUGCは、短期的に見ればエピソードの力で購入検討者の後押しができたり、心をぐっと掴んだりできるし、中長期的に見れば企業や商品のブランディングにも寄与できると思うんです。一方で、自分たちの情報発信を通じて、企業のありのままの姿を見せて好きになってもらえばいいじゃないかという考え方もnoteなら実現できます。

池田:企業からするとnoteは生活者と企業を仲介する存在なんですね。

金子:そうですね。とはいえ、いまの生活者はかなり目が肥えているし、見栄を張っているかどうかすぐにバレてしまいます。企業の方には、ぜひありのままの姿を生活者に見せてほしいなと思います。ただ、だからこそnoteを“活用する”という言葉は使ってほしくないんです。

池田:インフルエンサーと同じですね。“活用する”のではなく、“一緒に取り組む”がいい。

金子:どのプラットフォームにおいても、プラットフォームや生活者が自由に会話している空間の中にお邪魔しているという意識は忘れずにもっていたいですね。noteを活用して、ではなくブランド・note・生活者でどんないい関係を生み出せるかをこれからも模索してほしいし、私たちも全力でサポートしていきたいです。

池田:5月13日に「note proマーケティングパートナー参加」に関するリリースを一緒に出させてもらいましたが、トライバルもマーケティングパートナーの一員としてブランド・note・消費者のいい関係を構築するために積極的に協力していきます。これからもよろしくお願いします! 本日はありがとうございました!

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「noteがマーケティングにもたらす感情的な価値とは」をテーマに展開された今回の議論。企業のミッションやパーパスを、素直な言葉で最大限に表現できるnoteは、血の通ったマーケティングをするうえで必要不可欠な存在となる予感がしました。また、かねともさんから発される丁寧な言葉の数々に、ユーザーコミュニケーション担当者として、広報担当者としての実績と真摯に向き合ってきた姿勢を感じました。

「マーケ飯」では、今後もさまざまなフィールドの第一線で活躍されている方と池田のトークを発信していきますので、どうぞご期待ください!

過去の「マーケ飯」記事は、以下のマガジンよりご覧いただけます。

▼2人のアカウントはこちら
金子 智美 氏
note https://note.com/kanetomo

池田 紀行
Twitter @ikedanoriyuki
note https://note.com/ikedanoriyuki

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▼今回の収録で伺ったお店
食幹 渋谷

東京都 渋谷区 渋谷 3-5-5 HAKKAビル B1Fhttps://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13040639/

※新型ウイルス感染症防止対策に配慮のうえ収録を行い、撮影時のみマスクを外しています。

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