きっとあなたも無意識に…!? ソーシャルメディアが買い物に与えている影響とは

私たちは、日々何らかのモノやコトを選択しています。

以下の図のようなシチュエーションは、皆さんにもよく起きることなのではないでしょうか?

何らかのモノやコトについて考え、選択をする(あるいは買い物をする)ときに、私たちは頭のなかにいくつかの選択肢を並べます。これらを、消費者行動論という分野では「情報探索」と呼びます。

今回のテーマは「情報探索とソーシャルメディア」です。図のようなシチュエーションの「情報探索」というプロセスで、どのような探索行動が起こるのか、そして企業によるソーシャルメディアの施策はその行動にどういった影響を与えるのかについて解説します。

※編集注)この記事は、消費者行動論に関する内容を専門用語をできるだけ使わずに簡略化して書いているため、消費者行動論をより詳しく知りたい方は最後に掲載している書籍をご覧ください。

あなたも無意識にやっている? 2つの探索行動

消費者は、冒頭でご紹介したような状況に置かれてから選択をする(洗剤を買う・ホテルを予約する・住む場所を決める)過程で、2種類の探索行動をとります。

分かりやすく言うと、内部探索は「自分の記憶のなかから探ること」で、外部探索は「友人や知人、雑誌、インターネットなど外部の情報源から探ること」です。

洗剤がない、といった問題が起きたり、ゴールデンウィークは有意義に過ごしたい、といったニーズを感じたりしたときには、まず内部探索を行います。その後、情報が十分でなかったり欠如していたりした場合に、外部探索を行うといわれています。

また、内部探索をして外部探索をしたら終わり、というわけではなく、検討期間が長くなるほど両方を行ったり来たりします。

どのくらいの労力や時間をかけて探索を行うのかは、その問題やニーズに対して、どれくらい心理的な負担がかかってもいいと考えるのか、どれだけ時間があるのかなどによって異なります。

たとえば、洗剤のように普段から買う商品が同じである場合は、内部探索の結果「いつもと同じ商品」が選ばれやすく外部探索はほぼ行われませんが、店頭で簡単に比較されることもあります。

一方で、ゴールデンウィークに何をしようかを事前に考えるときは、内部探索によって「行きたかった場所」「やりたかったこと」などを思い出して(内部探索)、楽しそうなアクティビティをインターネットや雑誌などで探します(外部探索)。

調べるなかで「ダイビングが楽しそうだ」と思えば「ダイビングといえば宮古島とか、この前Instagramで見たオーストラリアもいいな」と思い浮かべたり(再び内部探索をして)、オーストラリアだったらどこがいいだろうかと検索したりして(再び外部探索をして)、内部探索と外部探索を繰り返して最終的な選択肢を絞っていきます。心理的・時間的余裕があればあるほど、これらに時間をかけて行います。

内部探索では「想起集合」に入っているものが選ばれる

先ほど、内部探索とは問題解決やニーズ充足の手がかり、答えを「自分の記憶のなかから探ること」とご説明しました。

特にブランドや商品、サービスについて思い浮かべる際は、頭のなかで以下の図のような分類がされています(この図でいうブランドとは、具体的な商品やサービス、お店などを指しています)。

世の中には数多くのブランドが存在していますが、内部探索はそもそも「自分の記憶のなか」を探ることなのですから、知らない・聞いたことのないブランドが思い出されることは決してありません。

そして、知っているブランドであったとしても、さらに以下の3つに分類されます。

  • 名前は知っているけれど、詳しくは知らないブランド(よく知らないから良し悪しが分からない)
  • 知っているブランドだけれど、選びたくないブランド
  • 選ぶならこの中から、というブランド(想起集合)

最終的に購入の選択肢に入るのは、この「想起集合」に含まれているブランドです。

想起集合に含まれるブランドは約3つといわれており、想起集合のなかでも一番最初に思い浮かぶ(第一想起の)ブランドがもっとも購入されやすくなるそうです。第一想起のブランドは、第一位再生知名のブランド、といわれることもあります。

それでは、想起集合に入るかどうかには、どういった要素が影響しているのでしょうか。

まず、何を買うか、どんなサービスを利用するかを検討するときには、何らかのキッカケ(問題やニーズの発生)が存在します。冒頭の例でお伝えすると「お腹が空いた」「洗剤がなくなった」「もうすぐゴールデンウィークだ」「部屋が狭い」などです。

こういったキッカケに加えて、現在自身が置かれている状況がブランドやサービスなどを絞り込むための条件となります。例えば以下のような項目です。

こういった要素が複雑に絡んで、頭のなかで選択肢が絞り込まれていきます。

まずカテゴリーが想起されることもあれば、すぐに具体的なブランドが想起されるなど、条件やその人によって何が想起されるのかが異なります。

カテゴリーが想起された場合は、そのカテゴリーを代表するブランドやサービスが選ばれやすいでしょう。ハンバーガーが食べたくなったときに「マクドナルド」が想起されたり、温泉旅行に行きたくなったときに(関東に住む方であれば)箱根が想起されたりするようなイメージです。

注意するべきなのは、何がきっかけ(問題・ニーズ)となっているか、どんな状況で内部探索をしているのかによって、同じ消費者・同じブランドであっても想起集合に入る場合とそうでない場合があるということです。

例)「お昼ごはんを食べたい!」という場合は「マクドナルド」が想起集合に入りますが、「あっさりしたものが食べたい」という場合は「マクドナルド」は想起集合に入りにくい

「失敗しないために」あるいは「継続的に」行われる外部探索

続いて、外部探索とは、内部探索によって情報が無かったり不足していたりする場合に「友人や知人、雑誌、インターネットなど外部の情報源から探ること」です。

外部探索は、さらに2つに分類することができます。

購買前探索とは、「すでに特定のカテゴリーの商品やサービスを買うこと」を前提にした探索行動で、買い物に失敗しないよう、最良の選択をするために行われます。例えば、新しいテレビを購入するために家電に詳しい友人に相談したり、記念日のディナーのお店選びのためにクチコミサイトを参照したりするような行動を指します。

一方で継続的探索とは、例えば自動車が大好きな方が日常的に車の情報を集めているような探索行動を指しています。将来(実際に買うとき)のために知識を蓄えていたり、調べること自体が喜びだったり、そのまま衝動買いに至ったりすることもあります。

ソーシャルメディアでのコミュニケーションは2つの探索にどんな影響がある?

さて、ここまで内部探索と外部探索それぞれについてご説明しましたが、ソーシャルメディアでのコミュニケーションはこの2つの探索行動にどのような影響を与えているのでしょうか。

ソーシャルメディアにおいて、ユーザーは大きく4つの投稿(経路)から企業やブランドに関する情報に接しています。

① 企業やブランドのアカウントが発信した投稿

② 企業やブランドのアカウントが発信した情報を、ユーザーが見て発信した投稿(引用RTやリプライ、ハッシュタグ投稿など)

③ マスメディアなどから発信されている企業やブランドの情報(広告やパブリシティなど)を、ユーザーが見て発信した投稿

④ 企業やブランドについてユーザーが発信した投稿

※ ソーシャルメディアによっては①~④の一部が存在しない場合がありますので、X(旧Twitter)やInstagramでの投稿をイメージしてください

以下の図でも確認してみましょう。

ユーザーは①~④の情報を受動的に見ることもあれば、能動的に検索をして見ることもあります。受動的にも能動的にも情報に接触するという双方向性が、ソーシャルメディアならではの特徴です。

トライバルがこれまで、多くのソーシャルメディアマーケティングを支援するなかで分かったのは、企業やブランドのアカウントによる発信(①)をできるだけ多く、直近で、ユーザーに好意的に受け取ってもらえて(エンゲージメントされて)いる方が、その企業やブランドが想起集合に入りやすくなるということです。

つまり、ソーシャルメディアでのコミュニケーションによって、ユーザーが(内部探索をしたときに)商品やサービスを思い出す可能性を高めることができると考えています。

②~④については、企業やブランドがユーザーによる投稿の量や質をコントロールできるものではありません。ですが、②~④が増える(話題になる)きっかけとなるコンテンツを準備することはできます(企業やブランドアカウントによるソーシャルメディアの投稿、広告クリエイティブ、プレスリリースなど)。

例えば、洗剤を販売する日用品メーカーの場合、日用品メーカーのアカウントが洗剤の使い方について投稿する → フォロワーが実際に使ったときの感想を投稿する → その投稿を見た他のユーザーが「その汚れには、あの洗剤がいいのか」と認識する、といったイメージです。

②~④のような情報を見る回数が増えれば増えるほど、その商品やサービスのことを記憶しやすくなり、内部探索のときに思い出しやすくなります。

そして、外部探索については2つの種類があるとご紹介しました。

  • 購買前探索
  • 継続的探索

購買前探索に「食べログ」「価格.com」などのクチコミサイトやX、Instagramといったソーシャルメディアを活用する人は多いです。それらの検索機能で、調べたい対象のことを検索すると、①~④の情報がヒットするでしょう。ですが、検索結果が①のような企業アカウントによる投稿だけではリアリティや信憑性に欠けると思われ、②~④のような企業ではないユーザーの投稿のほうが信頼できると感じられることもあります。

また、興味・関心を持つアカウントをフォローしていると、受動的に継続的探索を行うこともあります。Instagramの発見タブには、ユーザーの関心が高いと思われる投稿が表示されやすいことから、無意識に継続的探索をすることもありますし、気に入った情報をストックするために保存機能を活用する人も多いです。

以上のことから、ソーシャルメディアでユーザーに情報を届けることやエンゲージメントを高めること、好意的なクチコミを増やすことが、消費者が内部探索と外部探索をする際に思い出してもらい、信頼できる情報として受け取ってもらうために重要であるといえます。

ソーシャルメディアのコミュニケーションで意識するべき2つのこと

内部探索と外部探索の双方に影響を与える、ソーシャルメディアでのコミュニケーション。ソーシャルメディアでのコミュニケーションのゴールや目的を設定する際は、以下の視点を踏まえて考えることをおすすめします。

  • どのような問題・ニーズが発生したときに、内部探索で想起してもらうようにしたいのか、あるいは外部探索でクチコミを見てほしいのか
  • その理想が実現できているか、どのように検証するのか(どうやって効果測定をするのか)

これらが重要な理由の一つに、前述した「きっかけ(問題・ニーズ)や状況によって、同じ消費者・同じブランドであっても想起集合に入る場合とそうでない場合がある」ことが挙げられます。

どんなときに想起してほしいのか、あるいはクチコミを見てほしいのかという理想の状態を決めておくこと。さらには、どのような情報を受け取ってもらいたいのか、その状態を実現したときにどうやって確かめるのかをあらかじめ検討しておきましょう。

トライバルは、ソーシャルメディアにおけるコミュニケーション目的の設計や戦略策定、施策の実行、効果測定までを幅広くご支援しています。お困りのことがございましたら、以下よりお問い合わせください。

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最後になりますが、消費者行動論は、消費者がどのようなプロセスを経て商品を購入しているかを明らかにする分野として非常に有益です。消費者行動論についてもっと詳しく知りたいという方は、以下の書籍をご参照ください。

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