
ファンマーケティングが企業やブランドの持続的競争優位につながる理由
いま、ファンマーケティングに対する注目度が高まっています。トライバルは、2015年からファンマーケティングをベースとした「熱狂ブランドマーケティング」を推進してきました。なぜこれほど「ファンを大切にすべき」と言われているのでしょうか?
それは、企業やブランドが商品・サービスの値引き、販促キャンペーンなどに頼るマーケティングから抜け出し、持続可能な競争優位を築くことにつながるからです。
この理由について、まずは企業やブランドを取り巻く市場の環境から詳しくご説明します。
企業やブランドを取り巻く環境はどんどん厳しくなっている
「市場は成熟している」とよく言われますが、“市場の成熟化”を表すものとしては、以下のような状態が挙げられます。
・新商品、新サービスと呼ばれる期間は短く、価格はあっという間に下がる
・世の中で「すごい!」「新しい!」と言われる商品やサービスであっても、すぐマネをされる
・「そんなにいらないのに……。」と思うほどの機能がついている
・ニッチすぎる商品やサービスが生まれる
これまで、さまざまな企業が技術競争・発展を繰り返したことで、いまや機能や技術による競争優位性はなくなりつつあります。そのため新しい商品やサービスをつくっても、優位性がないため時間が経てば売れなくなる可能性が高い。商品ライフサイクルは短くなる一方で、次々と新しい商品やサービスが生み出されることでコモディティ化(※)し、市場が成熟するというわけです。
これらは、皆さんも仕事や生活のなかで感じているのではないでしょうか。
※コモディティ化:市場参入時に高付加価値を持っていた商品の市場価値が低下し、一般的な商品になること。
全員にとって「最高」の商品やサービスはもはや存在しない
たとえば、市場が成熟化しているなかでイヤホンを購入する場合、以下のような数多くの選択肢から商品を選ぶ必要があります。
・デザインやカラーバリエーション
・装着方法
・音質(低音が強調されている、クリアに音声が聞こえる、など)
・ケーブルの有無
・バッテリーの持続時間
・ノイズキャンセリング機能の有無
・防水機能の有無
このようななかから自分にあったイヤホンを選ぶのは至難の業ですよね。誰にとっても「最高」な商品・サービスをつくることだけに注力する状態は、すでに限界を迎えていると言っても過言ではないでしょう。
そして、機能面やサービス面で絶対的な優位を作ることができなくなった先に直面するのは、価格競争です。
安くし続ければいいのか?
先にお伝えすると、値引きの否定をしたいのではありません。
企業やブランドがただやみくもに値引きをしたり、バラマキやオマケをつけたりすると「この商品は安い」「安くて当たり前」という印象をもたれてしまいます。定価で販売すればそっぽを向かれ、もっと安い商品があれば選ばれなくなってしまうでしょう。
そうならないために、さらに値引きやバラマキを繰り返すと、自社商品を選んでもらうために “安くし続ける” という負のループに突入し、「最安」になるために利益を削り続けるしかなくなってしまうのです。
さて、一度これまでの内容をまとめましょう。
ここから、タイトルにも書いているファンマーケティングが企業やブランドの持続的競争優位につながる理由についてご説明していきます。
持続的な競争優位とは
競争優位とは、企業やブランドが “得意だと自負していること” と解釈されることがありますが、マイケル・ポーターは競争戦略論を語るうえで、真の競争優位を持つ企業を以下のように伝えています。
ポーターのいう競争優位は、ライバル企業を下すことではなく、卓越した価値を生み出すことと関わるものだ。さらにいえば、この言葉には具体的で明確な意味がある。真の競争優位をもつ企業は、競合他社に比べて低いコストで事業を運営しているか、高い価格を課しているか、その両方だ。
※引用:ジョアン・マグレッタ著「マイケル・ポーターの競争戦略」早川書房、2012年 P.92※引用:ジョアン・マグレッタ著「マイケル・ポーターの競争戦略」早川書房、2012年 P.92
つまり、競争優位を持つ企業は “低コストで事業を運営している” もしくは “高価格であっても商品やサービスを買いたいと思わせる価値がある”、あるいはこの両方の状態であるということです。
ファンマーケティングが持続的な競争優位につながる理由
皆さんは、以下のように「愛着を感じている」商品やサービスはありますか?
・値下げされていなくても買う
・他人にオススメする
・最新の商品・サービス情報を調べる
・企業やブランドに感想や意見を伝える
このようなファンが増えると、売上増加とコスト削減のどちらにも影響します。
値引きされた競合商品より高い価格でも購入してくれたり、推奨してくれることで新規購入者が増加したり、そのおかげで販促費や広告宣伝費を削減することができたり……などの効果を生み出してくれます。そしてその結果、利益率が向上するのです。
また、ファンは一朝一夕で生まれるものではないため、競合企業やブランドがファン数と熱量の高さを模倣するのは容易ではありません。
利益率の向上と競合から模倣されにくいこと。それがファンマーケティングが持続可能な競争優位の構築につながる理由です。だからこそ、ファンを増やしたり、ファンの熱狂度を高めたりすることが注目されているのです。
「放っておいても買ってくれる」は間違い
一般的なブランド論でブランド・ロイヤルティ(ブランドへの忠誠心、愛着)の重要性が説かれているように、“好きになってもらうことの大切さ” は決して目新しい話ではありません。
それでも、これまではマーケティング予算の多くを新規顧客獲得のために投下されるケースが多く、ファンに対するマーケティング活動へ投下されることはほとんどありませんでした。
大量に商品・サービスをつくり、多額の広告宣伝費を投下して認知度を高めれば売れる時代だったため、企業やブランドは「放っておいても買ってくれる」ファンに対してあまり関心を示さなかったのです。
しかし、ここまでご説明したように「最高」や「最安」だけで持続的な競争優位性を獲得することは難しいという状況が一層顕著になってきた今だからこそ、さまざまな企業やブランドがファンとの取り組みに注目するようになりました。
ファンに投下する予算は「費用」ではなく「投資」
さらに、ここで大切なのは、ファンに対して投下する予算は「費用」ではなく「投資」と捉えるべきだということです。
ファンといっても、顧客全体でみると限られた存在(一部)です。予算を投下すれば、劇的に売上や利益が向上するわけではありません。
熱量の高いファンが増えることで、中長期的には売上の増加やコスト削減(広告宣伝費や販売促進費の削減)という効果を生み出します。
ファンは企業やブランドにとっての「資産」と捉え、「投資」する考え方でファンマーケティングに取り組むことが望ましいでしょう。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました! ファンマーケティングが持続的な競争優位につながる理由について、少しでも皆さんの理解が深まれば幸いです。
次回は、“ファンは企業やブランドに対してどのような価値をもたらすのか” について詳しくご紹介します。お楽しみに!
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トライバルは、「ソーシャルエコノミーでワクワクした未来を創る。」というミッションのもと、大手企業のマーケティング支援からソーシャルメディアに関するツールの開発・提供まで幅広く手がけています。冒頭でご紹介した「熱狂ブランドマーケティング」の詳細は以下よりご覧ください。