見出し画像

SDGsやソーシャルメディアと、どう向き合うべき?【第2回 池田紀行のマーケ飯】

代表の池田(@ikedanoriyuki)が、さまざまなフィールドの第一線で活躍されている方とご飯を食べながらカジュアルに議論する企画「マーケ飯」。

第2回のゲストは、フェラーリ・ジャパンでマーケティングディレクターを務める遠藤克之輔さん。テーマは「SDGsやソーシャルメディアと、どう向き合うべき?」です。

近年、SDGsやエシカルといったキーワードが注目を集めています。企業やマーケターはそれらとどう向き合い、マーケティングを通じて生活者にどのようなアクションを促すべきなのか。
また、炎上や誹謗中傷を通して社会の分断を生む恐れもあるソーシャルメディアは、どうすれば秩序が守られるのか。2人で存分に語っていただきました!

フェラーリ・ジャパン マーケティングディレクター(今春にて退職し別ブランドへ) 
遠藤 克之輔 氏

家電メーカーなどを経て、広告代理店にてダイレクトマーケティング、デジタルマーケティング及びCRMのマーケティングコンサルタントとして数々のマーケティング業務に携わる。ウォルト・ディズニー・ジャパンにてカンパニーワイドなCRMプロジェクト立ち上げの後、ギャップジャパンで日本でのマーケティング・クリエイティブ・PR全体を統括。その後、フェラーリ・ジャパンにてマーケティング業務の責任者としてすべてを担当。
トライバルメディアハウス 代表取締役社長 池田 紀行
1973年 横浜出身。ビジネスコンサルティングファーム、マーケティングコンサルタント、クチコミマーケティング研究所所長、バイラルマーケティング専業会社代表を経て現職。
大手クライアントのソーシャルメディアマーケティングや熱狂ブランド戦略を支援する。
日本マーケティング協会マーケティングマスターコース、宣伝会議講師。 「キズナのマーケティング」「『ソーシャルインフルエンス」「次世代共創マーケティング」など、著書・共著書多数。

マーケティングの役割は、多くの人を幸せにすること

遠藤:池田さんとご飯を食べるのは久しぶりですね。というより、こうやって向かい合って仕事の話をするのは初めてかもしれないです(笑)。
トライバルの経営をはじめて、もう何年目になりますか。

池田:(2021年1月時点で)14年目ですね。

遠藤:そうなんですね。(トライバルを)長く経営していますが、やはり創業時には大志というか、いまで言うパーパス(存在意義)みたいなものはあったのでしょうか。

池田:うーん、自分が思う「正しいこと」を自分の流儀でやりたいに尽きますね。

会社員だと、所属している企業の売上・利益やその組織がやろうとしていることを一番に取り組まないといけないじゃないですか。個人としてやりたいことは、それらを達成した次にできることだと思うんですよ。

でも僕は、自分自身で意思決定をして、仲間を集めて組織をつくり、クライアントや生活者に価値を提供したいという想いがありました。

自分が思うクライアントに最適なマーケティングソリューションを提案して、その先にいる生活者を(良い方向に)変えていくことが最高に面白いと思っています。

画像1

遠藤:なるほど。

最終的には、池田さんはクライアントが社会に貢献できるような仕組みを、マーケティングを通じて提供したいのでしょうか。

池田:そうですね。長い間マーケティングに関わってきた身としては、マーケティングの役割は多くの人々を幸せにすることだと思っています。

いまは、生活者が必要とする“モノ”はすでに充足していて、体験価値や文脈価値で満たされる“コト消費”の状態だと言われていますよね。でも、個人のニーズを満たすだけで社会への負荷を顧みないまま生産・消費を続けると、社会が持続しない。

僕たちは、「持続可能な成長」を真剣に考えなければいけない時期に差し掛かっています。

社会全体の持続可能性を考えて経済活動を見直す歴史的転換点だからこそ、「いまマーケティングの力で、何ができるんだろう」と考えるようになりました。トライバルを立ち上げた目的も「正しいことがしたかったから」なんですが、社会的な課題を見つけて解決していくことは、自分の“ありたい姿”に合っているようにも感じます。

遠藤:社会やみんなの価値観が変われば、企業のあり方も変えなければなりませんよね。

池田:マスプロダクトを抱える大企業は、単年度で売上として回収できる施策や損益計算書(P/L)の数値をどう良くするかということに注力しがちです。多くの企業はまだ、パタゴニアのように事業を通じて社会課題の解決に貢献したり、社会を良くしたりすることに対して“会社ゴト”として向き合えていないように思うんです。

遠藤:たしかにパタゴニアは、事業活動を通じて「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。」というパーパスを体現している企業ですよね。

池田:例えば社会課題のなかでもSDGsは、コーズマーケティング(※1)やトライバルが強みとしているソーシャルメディアマーケティングととても相性が良いので、そういった手法を通じてクライアントや生活者の意識改革をしていきたいんです。

とはいえ、サラリーマンの出世は単年度の成果で決まり、成果を出せばその分自分の給与に反映されやすい。だからほとんどの人が、解決に時間のかかる社会課題に取り組むことに消極的です。それに取り組むことで将来的に企業の売上や好意度が向上し、自分の給与がプラスになるかもしれないのに。

そういった短期的な成果で評価が決まりやすい企業の構造が、SDGs達成のような長期的なビジョンを持てない理由の一つだと思うんですよね。

※1 特定の商品・サービスを購入(利用)することが環境保全などの社会貢献につながっていくことを訴求し、企業やブランドの評価を変えるマーケティング手法。

遠藤:たしかに、サラリーマンは給与やステータスがモチベーションになりがちですよね。もちろん人や企業もそうなってしまうことは理解できるんですが、自身の努力によって得られる利益が変わるのが資本主義だとすると、みんながそうやって自分の利益ばかりを追い求めれば、地球にも経済にも悪影響を与えてしまって誰もハッピーにはなれない。

何か大きな“変化”が起こらない限りはいまの状態が続きそうですが……この先どうなってしまうんでしょうね。新しい仕組みなのか主義なのか、プラットフォームなのか形は分かりませんが、これからどんな“変化”が起こるのか個人的にとても興味があります。

でも、根拠はないんですけど、新しいものが生まれそうな感覚はあるんですよ。

画像2

池田:何かが生まれそうな感覚、とても分かります。SDGsやエシカルについて語ると、まだまだ「あ、意識高い系?」ってちょっと面倒くさがられる傾向がありますけど、成長している企業はむしろ積極的にそういった考え方を取り入れ始めていますよね。

カーボンフットプリント(※2)を表示する商品も増えましたし、ある企業はサステナブルな素材を使った商品で生活者から支持を得ています。

でも、フェアトレード商品などはどうしても高価になりやすいので、価格だけで比較されるとまだまだ選ばれにくい。僕はそういった状態をマーケティングやPRの力で変えていきたいんですよ。「(高くても)なんかこっちの方が良いよね」っていう一人ひとりの生活者の意識やムーブメントを作っていきたい

※2 商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組み(CFPプログラムより引用)。

社会を変えるのは、正論ではなく一人ひとりの強い意識

遠藤:すごく共感できます。確かに世の中の意識や価値観を、次のステージに牽引していくことは重要ですよね。だけど、みんなの意識を一つにまとめることはとても難しい。

2016年のアメリカ大統領選で、トランプ氏を支持しないリベラル派が、不支持の理由を論理的かつ正しく言っていたのに、保守派から大非難されていたことが自分にとってすごく印象的だったんですよ。

僕はロジカルなことや正しい仕組みを考えることが好きだったから、その光景を見てかなりショックを受けました。お互いが相手のことを「悪」だと認識して、話し合いをしようとすればするほど、より深い分断が生まれてしまった。

池田:結果の良し悪しに限らず、「分断」が可視化されたことによって前には進んでいるのかもしれないですけどね。人にはそれぞれ異なった正義があることは否定できません。

何かを変えるなら、正論を説くだけではなくて相手の頭の中に相当強い意識を置きにいかないといけない。新しい倫理・価値・基準・自己肯定感……何なのかはそのときどきで変わるのですが。

ゴミの分別をしっかりやるかどうかも個人の倫理観によって左右されますよね。分別することが大事なことだと分かっているんだけど、「誰も見てないからいいか」と考える人が一定数いるかもしれない。誰も見ていないところでも全員の行動が変わって、はじめて社会は変わります。

生活者全員の意識を一度に変えることはできないから、まずは小さなムーブメントを起こすことから始めていくしかありません

画像3

遠藤:生活者の態度変容にどのくらい影響を与えているかは置いておいて、コンビニの袋が有料になったり、ストローが紙になったり、ガソリン車の販売が禁止になろうとしていたりすることは、すごいことだと思いますね。

社会のシステムのなかでそういった取り組みが始まったということは、人間の動物的本能として追い詰められている危機感でもあるんでしょうか。いまの状態が続くと、食糧自給が続けられず、空気が汚染されて住めなくなって、人が地球で繁栄できないと感じているとか。

人がそんな危機感を持っているなら、自分の欲を大事にするより「持続可能な成長」を実現することで、いまの環境を保つ方向に社会が動くのは自然ですよね。

池田:そうやって社会が新しく動こうとしていることには賛成なんですけど、僕たち大人の頭のなかには矛盾した考えが同時に存在している気がします。「未来の子どもたちが生きていくために持続可能な世界作りに貢献しなきゃ」という考えと、「自分一人がちゃんとしたところで世界は何も変わらない」という虚無感

だからこそ、さっきも言ったような「(正しくは)こうあるべき」や「こうすべき」といった強い意識を生活者一人ひとりの頭の中に置きにいかなきゃいけないのかなと。これまでは、多くの人の意識を変えるには(人間の存続のような)恐怖喚起しかないと思っていたんですけど、それも限界がありそうで……。

遠藤:確かに言われてみるとそうですね。僕は危機感でしか人は動かないと思っていたんですが、理想を言えば自律的にモチベーションを保ってアクションできるようになっていくのが良いはずです。

自分が行動した結果、社会がより良くなるし、自分も得をすると思ってもらえるようなストーリーを作るというか。

画像4

ソーシャルメディアは、まだ馴染んでいないだけ……?

遠藤:ソーシャルメディアのプロである池田さんに聞いてみたいんですが、人はいま非常に幼稚化しているような気がしませんか。

というのも、ソーシャルメディア上で熟慮されず反射的に行われるやり取りが横行しているように感じるんです。近ごろのさまざまな炎上や、攻撃的なリプライを見ていると。

池田:ソーシャルメディアが登場したことで、人々が持っているアイデアや知識が結集するようになりました。しかも半永久的に書き込みの記録が残るし、時間や距離の制約なく、誰でもアクセスできる。これはとても画期的なことだと思います。

その一方で、多くの書き込みが匿名なので、どれだけ条件反射で相手を攻撃しようが自分は傷つかないし、(いままでは)罰されることもほとんどない“場所”を手にしてしまった。

人には“陰”と“陽”の2つの側面があります。オフラインでの人間関係では、陰の部分を出してしまうと所属するコミュニティを追い出されてしまうかもしれないし、さまざまな不利益を被るから誰もそれを出さなかった。でも、オンライン(ソーシャルメディア)ではこの“陰”の部分を出しやすくなってしまったのではないでしょうか

遠藤:ソーシャルメディアが一般化したことで、人の悪い部分や幼稚な部分が顕在化したということですね。

池田:そうですね。ただ、僕は性善説を信じています。人間の“陰”の部分が表出しやすいソーシャルメディアが世の中に登場して、まだ15年しか経っていない。人が誕生したとても長い歴史から考えると、まだ使い方が「馴染んでいない」と考えた方が良いのかもしれません。

近い将来、義務教育にソーシャルメディアの使い方が含まれたり、法律が整備されたりしたら……僕の肌感覚ですが、あと30年くらい経てば倫理感や道徳心がアップデートされていくんじゃないかと。

そうすれば、前述したようなソーシャルメディアの良い点が最大限活かされる世界になると信じています。

画像5

遠藤:いまはたまたま悪い方に進んでしまっているだけで、人を貶めない使い方のほうがメリットがあると感じられるようになると、変わっていくかもしれないですね。

オンラインの秩序を保つために必要なもの

池田:トライバルでは、企業やブランドのコミュニティ支援をたくさんしてきましたが、そういった小さなコミュニティ運営にも、最低限の規則(法律)が必要なんですよ。小さな規模のコミュニティですらそういったものが必要なのであれば、より大きな(社会という)コミュニティならなおさら必要なんじゃないでしょうか。ということは、いまの社会が長く存続しているもっとも大きな要因は、法律のおかげですよね。

法律によって、「これをやったらダメですよ」というルールが人間の“陰”の部分をちゃんと抑制できていたから、人はここまで繁栄した。でも、オンラインの世界にはまだそれ(法律による秩序)がなさすぎる

オフラインで人に攻撃したら罰があるのに、オンラインでは攻撃しても罰が(ほとんど)ないのはおかしいじゃないですか。ちゃんと法律を整備して、オンライン上でも「正しく振る舞わないと罰がある」という状態を作るべきです。その上で、教育を通じて道徳心や倫理感が形成されると、人間はソーシャルメディアを健全なプラットフォームとして使用できるようになると思います。

遠藤:それはきっと、ソーシャルメディア以外でも必要ですよね。VRや5Gを活用したセカンドライフ(※3)的な世界が近い将来到来するかも……と考えると、オンラインもオフラインのように国家・社会・法律を整備して初めて正常に機能するのかもしれません

※3 アメリカ サンフランシスコのLinden Lab社が開発・運営するインターネット上の仮想世界。

池田:現実世界では街の壁に落書きされても誰がやったかわからないけど、オンラインではそうもいかなくなっている。生まれた瞬間から一人ひとりにチップが埋め込まれて、そのチップに付与されているIDが、マイナンバーやSNSのアカウントなどに紐づいて、オンラインでの行動ログが全て記録される時代になるかもしれない

既にレビューサイトなどは、不正なレビューに汚染されて本当に役に立つレビューと見分けがつかなくなっているし、今後「一人につき一つのIDを付与しなければダメだ」という流れになれば、法律が整備されてソーシャルメディアの(悪い面での)匿名性が失われ、利用方法が大きく変化する可能性もありそうです。

遠藤:1990年代にインターネットが勃興したとき、「これこそが民主主義だ!」という意見がありましたよね。オフラインでは法律によって一人ひとりの自由に制限がかけられていたから、本当に自由な世界はオンラインにあると思われていた。

ところが30年ほど経ってふと冷静に考えてみると、オンラインでは人々が幼稚化、暴力的になっている。オンラインこそちゃんと管理されるべきとなれば、次は「オフラインの方にこそ自由があるんだ」という状態になるかもしれないですね(笑)

画像6

池田:確かに。オンラインも無秩序な自由ではなく、法律の力や生活者の倫理観、道徳心などで秩序が守られる自由な社会になれば、オフライン・オンライン関係なく人々が生活しやすい社会になるのかなと。そういう新しい社会でのマーケティング、実に楽しみです。とてもワクワクしますね! 

今日は貴重なお話をありがとうございました!

遠藤:とても楽しかったです、またぜひ仕事の話をしましょう!

・・・

「SDGsやソーシャルメディアと、どう向き合うべき?」というテーマで展開された今回の議論。これから訪れるであろう社会やソーシャルメディアの変化について、皆さまはどのように感じたでしょうか。

「マーケ飯」では、今後もさまざまなフィールドの第一線で活躍されている方と池田のトークを発信していきますので、どうぞご期待ください!

第1回「マーケ飯」の記事は以下よりご覧いただけます。

▼2人のLinkedin・Twitter・noteアカウントはこちら
遠藤 克之輔 氏

Linkedin Katsunosuke Endo

池田 紀行
Twitter @ikedanoriyuki
note https://note.com/ikedanoriyuki

今回収録で伺ったお店は、六本木にある中華料理の名店「香妃園 (コウヒエン)」さん。レトロな雰囲気のなかで味わう名物の「とり煮込そば」が絶品! 撮影にご協力いただき、ありがとうございました。

※新型ウイルス感染症防止対策に配慮のうえ収録を行っています。

香妃園 (コウヒエン)
〒106-0032
東京都 港区 六本木 3-8-15 瀬里奈ビレッジ 2F
https://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13001271/

画像7

関連記事


最新のセミナーやダウンロード資料などは、メルマガでお知らせしています🌻

励みになります!
46
トライバルメディアハウスは「ソーシャルエコノミーでワクワクした未来を創る。」をミッションに掲げるマーケティング会社です。マーケターやクリエイターが抱えるマーケティング課題を解決する場として、noteを公開しています。