若年層こそトレンドの最先端。彼らの行動をアシストして、未来の顧客化を目指す

2022年4月20日〜21日、オンラインイベント「ソーシャライズサミット2022 真っ先に選ばれるブランドになるための新常識」を開催しました。

情報爆発の時代において、真っ先に選ばれるブランドとなるために有効なのが、マーケティングコミュニケーションの 「ソーシャライズ」 です。

ソーシャルメディアに代表されるように、人と人、興味と興味がつながり、あらゆる垣根を超えた発信や共有が当たり前となったいま、企業は消費者とどのようにコミュニケーションしていくべきなのでしょうか。

トークセッション「未来の顧客・若年層は何を求めているのか」では、若年層マーケティングの第一人者として活躍する株式会社SHIBUYA109エンタテイメントの長田麻衣さんと、トライバルメディアハウスの鳴海まいが対談。

若年層に支持されるコミュニケーションのために不可欠な考え方について議論しました。

登壇者
株式会社SHIBUYA109エンタテイメント マーケティング戦略部 エキスパート SHIBUYA109 lab.所長 長田 麻衣さん

株式会社トライバルメディアハウス マーケティングデザイン事業本部 事業本部長 MDビジネスプロデュース部 部長 チーフプロデューサー/Spark! 所長 鳴海 まい

Z世代は「未来の顧客」いまのうちにアプローチが必要

「毎月、200人の女の子に『いま、これが流行っている』や『これから来そうなもの』をインタビューしています。LINEでは1,000人ほどのZ世代とつながっていますね」

そう話すのは、SHIBUYA109の若者研究機関「SHIBUYA109 lab.」で所長を務める長田さん。2018年から継続的に若年層のトレンド調査を行っています。膨大な若年層と交流するなかでキャッチした最新トレンドは、SHIBUYA109 lab.発行の調査レポートや毎年発表される「トレンド予測」にまとめられます。

若年層のトレンドに精通する長田さんは、その消費スタイルを「衝動買いをあまりしない。結構、慎重です」と分析します。若年層には「限られた条件のなかで、いかに楽しむか」という価値観が根強く、それが慎重な消費スタイルにつながっているそう。こうした点を踏まえ、長田さんは「若年層をターゲットとしないブランドであっても、いまのうちに若年層にアプローチしておく必要があります」と語ります。

長田「10〜20年後、消費の中心はZ世代に移ります。長期的な目線で見れば、Z世代はあらゆる企業にとって未来の顧客なんですね。また、若い頃の消費の価値観は、30代や40代になっても受け継がれるもの。Z世代は消費の中心的な担い手になっても、慎重に商品を検討するはずです。

それならば、いまのうちにZ世代との関係性やストーリーを築いておいたほうが、未来の顧客を獲得するうえでのハードルを下げられると思います」

さらに長田さんは、SNSネイティブ世代だからこその「拡散力」もポイントだと指摘。若年層をターゲットとしない企業やブランドであっても、若年層の「拡散・共有するモチベーション」を捉えてコミュニケーションしていくことが重要だとしました。

「手元だけで映える」「推し活」若年層の心を掴んだプロモーション事例

では現在、どのようなプロモーションが若年層の話題となっているのでしょうか。近年、注目を集めているプロモーション事例が紹介されました。

長田「カンロとライフスタイルストア・PLAZAのコラボレーションで発売された『EMOTIONAL CANDY』。音楽プレイヤーをイメージしたパッケージに、色鮮やかなキャンディを詰め込んでおり、ビジュアルやストーリーの『エモさ』が若年層を惹きつけました。夜景を背景に撮影したパッケージは、Instagramなどで数多く投稿されましたね」

トライバルの鳴海は、若年層ならではのトレンドをこう分析します。

鳴海「若年層はデジタルタトゥーなど『ソーシャルメディアの怖さ』も理解しているので、顔出しの必要がなく、手元だけで映える写真が撮影できることを求めています。この『EMOTIONAL CANDY』は、ソーシャルメディアでのシェアが前提となっている世代をよく理解したプロモーションだと思います」

一方で、商品を通じてコミュニケーションが生まれることも、若年層を惹きつけるためには重要です。その事例として「たべっ子どうぶつ×GU」「サイゼリア×PUNYUS」といった、食品とアパレルの異業種間コラボレーションが挙げられました。

誰もが知るお菓子やチェーン店のメニューがプリントされたアパレルを身に付けることで、友人の興味を引き、コミュニケーションのきっかけを作ることができると、多くの若年層から支持を集めています。

長田「既存の商品やサービスを活用しながら、プロモーションを成功に導くケースも増えています。バスボムやハンドクリームで知られるLUSHの新宿店では、ラベルのテキストをカスタマイズできる『カスタムラベルサービス』を提供し、若者の間で話題になりました。

特にこのキャンペーンの成功を後押ししたのは『推し活』です。好きなアイドルや俳優の名前を商品ラベルに記し、ソーシャルメディアでシェアするという応援方法が、若年層を中心に大きな広がりを見せました」

鳴海「コロナ禍の影響で『推し』に会えない状況が続くなかで、その愛を発散する方法として支持を集めたのですね。社会変化がトレンドに影響した一例だと思います」

ロッテのチョコレート『ガーナ』は、2022年のバレンタインに実施したキャンペーンで画像素材や音源、ARスタンプを特設サイト上で提供し、それを利用したソーシャルメディアの投稿を促すプロモーションを実施。長田さんは「ソーシャルメディア向けの素材を提供する」という手法についてこう語ります。

長田「企業側が『拡散してください』と働きかけるキャンペーンは、もはや意味がないかもしれません。これからは消費者が主体的にキャンペーンを楽しみ、自然と拡散したくなるような状況を作ることがカギになると思います。『ガーナ』の事例も既存商品を活用しているので、あらゆる企業やブランドの参考になるはずです」

2022年のトレンドを牽引する「3つの価値観」

さまざまなトレンドを生み出し続けている若年層ですが、その消費スタイルは世代特有の価値観に支えられています。長田さんはトレンド調査を続けるなかで、若年層の消費に共通する3つの価値観を見出しました。これらの価値観は今後も継続していくことが見込まれるため、プロモーションを成功に導く良いヒントになると言います。

長田「1つ目は『再現消費』。ソーシャルメディアの爆発的な普及により『あるフォーマットを再現して楽しむ』という傾向が若年層の間で広まりました。例えば、人気のカフェで同じ構図の写真を撮影して、ソーシャルメディアに投稿するなどです。そのため、若年層向けのプロモーションでは、ソーシャルメディアなどで再現しやすいかがポイントになります。

2つ目は『マイメン消費』。『マイメン』とは、特に親しい友人・仲間を指します。従来ソーシャルメディアなどを通じて『ゆるく、広くつながる』という傾向が強かった若年層ですが、コロナ禍によって対人関係の価値観に動きが見えました。

直接の対面が制限されるなかで、従来のゆるくて広いつながりをベースにしつつも、『安心できる親しい仲間との時間を大切にする』という価値観が前提化しつつあります。今後は、少数のコミュニティで楽しむ消費スタイルが若年層の間で広まるでしょう。

3つ目は『逆算消費』。商品単体の購入を目的にするのではなく、ある世界観や体験から『逆算』して商品を購入することです。最近人気なのは、カラフルなケーキやハンバーガーなど、アメリカンなフードを持ち寄る『アメリカンパーティー』。その風景をソーシャルメディアに投稿するトレンドが生まれています。『アメリカンパーティー』という世界観から逆算して、フードを購入している点が注目ポイントです」

鳴海もこうした価値観について、今後はプロモーションにおいても「この商品は、こんな体験に使ってください」と企業側から伝えていくことが重要になりそう、と述べました。

若年層向け施策に欠かせないのは? 取り入れたい「2つの要素」

若年層に向けたプロモーションを進めるうえで、心得ておくべきことは何でしょうか。長田さんは「価値観や文化へのリスペクト」だと訴えます。

長田「何よりも大切なのは、『若い世代が何を楽しんでいるか』を最優先で考えることです。例えば、若年層がソーシャルメディアで最も重要視しているのは、友達とのコミュニケーション。企業やブランドは『どうすればコミュニケーションを創出できるか』を踏まえて、空間や世界観を設計していくのが重要です」

また若年層はSDGs、とりわけジェンダー・平等に対する意識も強いため、ソーシャルメディアの投稿やプロモーションのコンセプトなどには十分な配慮が必要だといいます。一方、鳴海は若年層の生の声を聞くことの重要性を語りました。

鳴海「私のオススメは『若年層と同じ目線でソーシャルメディアを使ってみる』です。若い世代は、企業アカウントの投稿ひとつから、その企業のソーシャルメディアへの関心度や注力ぶりを察知するリテラシーを持っています。まずは、ソーシャルメディアのトレンドを自ら体験しながら、企業アカウントのパーソナリティを創り上げていくのがいいのではないでしょうか」

プロモーションを成功に導くうえで欠かせない「リスペクト」と「共感」。若年層のトレンドに精通する2人のアドバイスは、あらゆるマーケティングコミュニケーションに共通する視点と言えるでしょう。

議論のまとめ

  • 若年層はどの企業にとっても「未来の顧客」
  • 若年層向け施策のポイントは、若年層の「拡散・共有するモチベーション」を捉えて友人とのコミュニケーションを生むこと
  • いまの若年層の価値観は「再現消費」「マイメン消費」「逆算消費」
  • 若年層向け施策には「価値観や文化へのリスペクト」と「共感」が必須

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