組織やチームの推進力を強くする「パーパス」。必要性と実現に向けたステップを解説します

突然ですが、仕事をする中でこういったお悩みや問題はありませんか?

・仕事をやらされているように感じる
・新しいアイデアや施策が生まれない、受け入れられない
・部署やチームの一体感が少ない
・役員や管理職、リーダーが何を考えているのか分からない、考えやメッセージが浸透していない

上記のような悩みを解決し、自律的かつ意欲的な組織やチームにして、推進力を強くするには、近年ビジネスシーンで注目されている「パーパス」が鍵を握っています

2021年10月5日にサイバーエージェントがパーパスを制定し、目にする機会が増えていると感じる方も多いかもしれません。

今回の記事では、トライバルがこれまで支援した企業事例にも触れながら、以下についてご説明します。上記のような悩みを抱えている方やパーパスについて理解を深めたい方は、ぜひご覧ください。

・社員が上記のような悩みを抱く理由
・パーパスとは何か、なぜ必要なのか
・自律型組織にするための具体的なステップ

こういった悩みや問題はなぜ生まれるのか?

冒頭のような悩みや問題が生まれる主な原因は、経営に関わる役員や管理職、リーダーと、目の前の仕事に向き合う現場社員の課題や目指していることの違いにあります。

それぞれの立場で、視点や考え方、優先しなければならないことが異なるため、両者で意見が違ったり、相手の考えを理解しづらい状況になったりします。こういった状況が続くと、先ほどのような悩みや問題を抱く人が増えてしまうのです。

良好な事業活動をしていくには、役員や管理職、現場社員の全員が企業が実現したいことを互いに理解した上で、同じ方向を向いている状態にすることが大切です。そして、この状態にするために欠かせないのが「パーパス」です。

「パーパス」とは

パーパスは一般的に「目的」や「意義」と訳されますが、ビジネスシーンで注目されているパーパスは「存在意義」を意味します。特に、「企業の社会的な存在意義」という定義で使われるケースが増えています。

ミッションやビジョンと混合されることがありますが、ミッションは企業理念(私たちの会社は何者か)を、ビジョンは理想的な状態(私たちの会社はどこへ向かうのか)を指す企業主体の概念です。

一方でパーパスは、企業だけでなく社員やお客さまなどのステークホルダーとともにどんな社会をつくりたいのかを表した、ミッションやビジョンとは少し異なる概念です。

パーパスは、企業が社会的にどのような存在なのか、どのような姿勢で事業活動をするのか、そして事業活動によってどのような社会問題を解決するのかを言語化したものです。

近年、企業にパーパスが求められる背景には以下のような消費者意識が挙げられます。

・日本の消費者の60%が、世の中で物議をかもしている話題に対する姿勢を理由に、ブランドを選んだり、変えたり、避けたり、ボイコットしたりする(※1)

・日本の消費者の37%が、ブランドが社会問題の解決を推進してくれることに期待している(※1)

・日本において企業が社会的課題に取り組むことへの期待は高まっている(※2)

・日本では従業員の約2人に1人が、自分の会社が社会問題に取り組むことを期待している(※2)

・日本の従業員の49%が、就職先を決める上で「社会的意義のあることに共に取り組む機会の提供」を期待している(※3)

※1 エデルマン・ジャパン/世界8カ国、8,000人のオンライン、32,000人のモバイルユーザーを対象に実施した消費者意識調査「2018 エデルマン・アーンドブランド
※2 エデルマン・ジャパン/世界14カ国、16,800以上のサンプルを対象に実施したオンライン調査「2021 エデルマン・トラストバロメーター 中間レポート(5月版)
※3 エデルマン・ジャパン/世界27カ国、33,000以上のサンプルを対象に実施したオンライン調査「2019 エデルマン・トラストバロメーター 調査概要

このような消費者意識が、パーパスの注目を後押ししています。

企業と社員のパーパスが重なると強い推進力が生まれる

パーパスについて「企業の社会的な存在意義」と説明してきましたが、パーパスは企業のみが掲げるのではなく、個人にも存在しうるものです。誰しも、大切にしている価値観や社会に役立ちたいという想い(≒個人のパーパス)を持っています。

そしていま、若い世代を中心に、自身の価値観や社会的な意義をもとに仕事を選ぶという考え方が広まりつつあります。

自分と似た価値観を持つ企業で仕事をしたい、仕事を通じて社会的な課題を解決したいという想いのある人たちにとって、企業のパーパスと個人のパーパス(の一部)が重なっていることは、仕事をする上で重要なポイントです。

重なっている、というイメージについては、以下の図にある2つの円(左は企業のパーパス、右は社員のパーパス)をご覧ください。

円が重なっているほど社員が企業のパーパスに共感できているということを表し、社員は企業のパーパスを自分のこととして捉えられ(当事者意識)、役員や管理職とも同じ視点に立ちながら事業活動をより強固に進めることができます

さらには、納得感を持って自律的に働くことにつながり、いわゆる「管理型組織」から「自律型組織」への変革が起こりやすい状況になります。自律型組織に変わると、社員だけでなくチームや部署、組織に以下のような好循環が生まれるでしょう。

・企業のパーパスに共感しているので、社員はより主体的に企業に関わろうという意欲が湧く
・当事者意識を持った社員は自らの意志で目的意識を持って動くため、組織やチームの推進力が強くなる
・同僚や同部署の社員も企業のパーパスに共感できていると、効果的・効率的なチームビルディングができ、チームワークが発揮しやすくなる(同じ目的意識を共有しやすい)

パーパスを中心に自律した組織にするための3ステップ

では、企業と社員のパーパス(一部)が重なっている状態にして事業活動を強めるには、どうすればいいのでしょうか?

ここからは、企業と社員がパーパスを重ね、パーパスを実現していくための3つのステップについて解説します。

この記事では、①と②について重点的にお伝えしますが、大切なのはパーパスは定めて終わりではなく、定めてからが始まりであるという意識を持つことです。パーパスを役員や管理職などが規定した後、「あとはよろしく」と現場社員に伝えるだけでは、社員は困惑する上に企業のパーパスを自分のこととして考えづらく、自律型組織にすることもできません。

今回は、トライバルが実際に支援した複数の企業(店舗での接客・販売を行う大手企業)をもとに、パーパス策定と実現に向けたステップをお伝えします。

編集注)パーパス策定のステップは企業規模や事業フェーズによって変わるため、ひとつの事例としてご覧ください。

①自社のパーパスとは? を問う

このステップのゴールは、自社のパーパスを明文化することです。自社のパーパスを問い、言語化するために、以下のような流れでワークショップなどを実施します。

・企業役員や管理職が集まり、パーパスの方向性を検討する

まずは、経営に関わる役員や管理職とのワークショップを行います。

創業時から大切にしている経営理念や価値観を棚卸しするとともに、お客さまの生活やライフスタイルに起きている変化、社会の動向を考慮し、これからの社会において自分たちはどういう存在なのか? どんな価値を発揮するのか? について検討します。

・社員が集まり、お客さまや世の中への提供価値について意見を出し合う

次に、同様のワークショップを社員とも行います。自分たちはどういう存在で、どんな価値を発揮するのかに加えて、お客さまに言われて嬉しかったことや自社らしさなどを考えます。

トライバルが支援する中で特に意識したのは、役員などの限られた人たちだけでパーパスを決めて、上意下達で社員に伝えるのではなく、できるだけ多くの社員から意見を聞くこと。社員一人ひとりが大切にしている価値観(≒個人のパーパス)を傾聴し、共有しあうことで、自社らしさについての考えを深めることができます。

また、社員はパーパス策定のプロセスに関わり、企業と社員のパーパスの重なりに気づくことで、自社のパーパスをより自分ゴトとして捉えやすくなります。社歴や役職、年齢、性別といった枠組みを超えて、多くの社員がこのワークショップに参加するようにしましょう。

・ワークショップの内容を受けて、自社のパーパスを言語化する

ワークショップで出た意見をもとに、自社の社会における存在意義を言葉にしていきます。

パーパスは「◯年後に売上△△億円」のような「売上目標」ではありません。さまざまなステークホルダーとともにどんな社会をつくりたいのか、社会にどのような良いインパクトを与えられるのか、という視点で言語化していきます。 

特に、以下3点に着目しながらまとめていくと良いでしょう。

・ステークホルダー(株主やお客さま、サプライヤー、地域のコミュニティなど)からの期待
・これからの社会の変化(未来予測)
・自社らしさ(私たちがやるべき理由)

参考までに、4つの企業のパーパスを引用してご紹介します。

▼ユニリーバ
「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」https://www.unilever.co.jp/planet-and-society/

▼ネスレ
「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」
https://www.nestle.co.jp/csv/japan

▼ソニー
「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/purpose_and_values/

▼サイバーエージェント
「新しい力とインターネットで日本の閉塞感を打破する」
https://www.cyberagent.co.jp/corporate/purpose/

② パーパス実現に向けた行動計画を決める

このステップでは、①で決めたパーパスを実現していくために、言語化したパーパスに対して各部署やチーム、社員は何ができるのかを考えます。その行動ができるような仕組みや制度を作り、行動を適切に評価できるようにすることがゴールです。

以下のような流れでワークショップを行い、パーパス実現に向けた行動計画を立てましょう。

・部署やチームの役割と価値を整理する

一般的に、企業は部署やチームが役割ごとに分かれています。お客さまにサービスを提供するために、それぞれの業務がどんな役割を担い、どのような価値を発揮しているのかを付箋などを用いて整理します。

この作業は、お客さまにサービスを提供するまでの役割や価値の流れを俯瞰的に知るだけでなく、パーパス実現に向けて全員が同じ方向を向くために行います。そのためにも、可能な限り部署やチームの社員全員が参加するようにしましょう。

・パーパス実現に向けた、部署やチームの理想的な状態を明文化する

部署やチームの役割や価値を受けて、自分たちの部署やチームはパーパスを実現するためにどのような状態になると良いのか(達成したい理想のゴールはなにか)を議論しましょう。

こちらも、できるだけ部署やチームの全員で対話することをおすすめします。社員同士の価値観を踏まえて対話し、時には議論することで、企業と社員のパーパスの重なりが認識しやすくなります。

・その状態を達成するためのKPIを決める

部署やチームが達成したい理想の状態(=ゴール)を議論したら、その達成度合いを計測するための主なKPIを設定します。できるだけ定量化できる指標にすることが望ましいです。

なお、KPIは1つである必要はなく、図のようにいくつか設定しても構いません。定めたKPIをすべて達成することで理想の状態に近づくように、ゴールに直結している指標を選びましょう。

理想の状態やKPIについては、一度決めて終わりとするのではなく、「なぜこの状態を目指しているのか」「なぜこの指標を追っているのか」を定期的に見直し、新しい社員が部署やチームに入ったときに伝えられるようにしておくことが大切です。

・KPIを達成するための行動と計画を決める

最後に、具体的な行動と、その行動をしていくための計画を考えます。

このとき、いまの業務を振り返りながら、部署やチームが役割を果たすために「譲れないこだわり」を考えたり、反対に「新しく取り組みたいこと」や「やめたほうがいいこと(やめたいこと)」などを踏まえて議論したりすることをおすすめします。

「② パーパス実現に向けた行動計画を決める」におけるこの一連のステップに、できるだけ多くの社員を巻き込むことで、パーパス実現に向けた取り組みに自分も参加している満足感や決まったことに対する納得感が得られやすくなります。

企業と社員のパーパスがどのように重なっているのかを、お互いが確かめる時間として重要な役割を果たすでしょう。

「③パーパス実現に向けてステークホルダーとコミュニケーションをとる」では、①や②で考えた対社員ではなく、社員以外のステークホルダー(株主やお客さま、サプライヤー、地域のコミュニティなど)とどのようなコミュニケーションをしていくのかについて考えていきます。

この内容については、また別の記事でご紹介する予定です。お楽しみに!

お客さまや世の中からも応援される企業に

パーパスを策定し、社員やステークホルダーとコミュニケーションを重ねるには、多くの労力と時間を要します。さまざまな部署を横断し、巻き込んでいく必要があり、私たちがご支援している企業でも2年ほどの時間をかけて行動計画を立てています。

労力や時間がかかる一方で、企業と社員のパーパスが重なり、社員が自律的に働けるという状態は間違いなく企業の大きな競争力になるはずです。そして、モチベーションエンジニアリング研究所の研究によると、企業と従業員の相互理解・相思相愛度合い(従業員エンゲージメント)が高い企業は、労働生産性にプラスの影響があるという結果もあるそうです。

企業と社員が理解し合い、パーパスを軸に自律的に働く社員と企業の社会的な存在意義を発揮していくことで、お客さまや世の中からも応援されるような企業へと成長することができるでしょう。

最後に、この記事を公開するまでの想いをお話させてください。

トライバルは2015年ごろから、多くの企業やブランドのファンマーケティングを支援してきました。担当者の方々とお客さまについて考える中で感じ続けてきたのは、企業やブランドを好きに(ファンに)なってもらうために、まずは社員が自社のことを好きで、そこで働くことを豊かに感じ、働くことへの意義を感じているべきであるということです。企業のファンを増やすために、お客さまだけでなく社員のことにも目を向けたい、そのように考えてきました。

社員の価値観や社会の役に立ちたいという「個人のパーパス」と会社の存在意義を示す「企業のパーパス」を重ね、パーパス実現のために自律型組織に導き、推進力を強めることは、結果的にお客さまへのサービスがより良い方向に進み、生産性も上がっていく。その道のりは決して平坦ではありませんが、そういった企業を一緒に増やしていきたいと思っています。

トライバルの想いに共感いただき、社員やお客さま(などのステークホルダー)との良好な事業活動、自律型組織にするための支援に興味のある方は、ぜひ以下よりご相談ください。

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