タイドラマが人気! その理由をクチコミから調べてみた

気軽に海外へ行くことが難しい状況のいま、「タイ」が注目されています。ソーシャルメディアでも「タイ」に関する話題を目にする機会が増えているなかで、特に「タイドラマ」が人気です。

今回はその理由をツイートから読み解いていきたいと思います。タイについて詳しく知りタイ皆さん、必読です!

旅行先として人気のタイはツイート数も増加していた

下図は、総合旅行サイト エクスペディアの日本語サイト エクスペディア・ジャパンが発表する2018年の「人気海外旅行先ランキング」と、2020年10~12月に検索された「海外旅行先ランキング」です(※1)。

※1 エクスペディア・ジャパンが発表する「2018年の人気海外旅行先ランキング(2018年の予約状況に基づいた旅行先/2019年1月17日)」「2020年の海外旅行先検索ランキング(2020年4月に2020年10月~12月チェックインで検索された旅行先/2020年6月4日)」を参照し、ソーシャル文化研究所が作成

2018年のランキングを見てみると、1位にソウル(韓国)、2位に台北(台湾)と東アジアの都市につづき、3位にバンコク(タイ)がランクインしています。

また新型ウイルスの影響で外出自粛中だった2020年4月に検索された海外旅行先ランキングでは、2018年時点でトップだったソウルが5位、2位だった台北は4位にランクダウンしましたが、バンコクは2位にランクアップしています。

続いて、2020年のランキングでトップ3に入っている「ハワイ」「インドネシア(バリ島)」「タイ(バンコク)」のクチコミ数の傾向をツイート数で確認してみると

「ハワイ」「インドネシア」「タイ」のオーガニックツイートを集計/集計期間:2018年4月1日~2019年3月31日、2019年4月1日~2020年3月31日、2020年4月1日~2021年3月31日/データ元:ソーシャルリスニングツール「ブームリサーチ

ハワイとインドネシアは減少傾向ですが、タイのツイート数は増加していました。

タイが2020年の「旅行先ランキング」で順位を上げ、ツイート数も増加しているのはなぜでしょうか? その理由のひとつとして考えられるのが「タイドラマ」です。

日本で映画化も!? タイBLドラマがアツい!

いま、「タイドラマ」のツイート数が急増しています。

「タイドラマ」のオーガニックツイートを集計/集計期間:2018年4月1日~2019年3月31日、2019年4月1日~2020年3月31日、2020年4月1日~2021年3月31日/データ元:ソーシャルリスニングツール「ブームリサーチ

2019年の2,520件から2020年は49,740件に増え、1年で約20倍に伸びています。

「タイドラマ」と聞いても馴染みがない方も多いかもしれませんが、豊富な作品を配信する動画配信サービス Rakuten TVの2020年度 年間ランキング(※2)では、TOP5のうち3つがBL(ボーイズラブ)を描くタイドラマでした!

※2 Rakuten TV Newsによる「2020年度 年間ランキング 総合編(2020年12月19日)」のTOP5を参照し、ソーシャル文化研究所が作成/ソーシャルリスニングツール「ブームリサーチ」で各ドラマタイトルのオーガニックツイートを集計(集計期間:2020年1月1日~ 10月31日)

タイドラマの盛り上がりは、「TVガイド」などのテレビ情報誌を発刊する東京ニュース通信社が日本初のタイドラマ専門誌「タイドラマガイド『D』」を発売したことや、毎年5月に代々木公園で開催される「タイフェス」が今年「タイドラマフェスティバル」とテーマを変えて実施されたことからも分かります。

また、HMV&BOOKS SHIBUYAではタイドラマコーナーが設けられ、3位にランクインしツイート数が最も多かった「2gether」の関連商品が並べられました。

「2gether」は、女性誌「anan」から本作を特集した別冊特別号を発売されたり、主演の写真集が発売されたり、ドラマ第5話放送後にXで世界トレンド1位になるほどの人気作品です。

タイドラマは、なぜこれほどまでに人気なのでしょうか? 「2gether」に焦点をあてて、ツイートから人気の理由を探ってみましょう。

「2gether」人気の理由とは?

(1)タイのイケメン俳優にハマるファン続出(ツイート数:314,180件)

2getherの主人公は、恋愛がうまくいかないタインとクールなイケメン サラワット。大学生である2人が恋に落ちて、愛を育んでいく様子を描いた学園ラブストーリーです。

はっきりした顔立ちでファンから「彫刻のよう」と言われるサラワット役のブライト(Bright)さんと、童顔で爽やかなタイン役のウィン(Win)さんにハマる人が続出しており、タイプの違う2人のイケメンがファンの人気を集めて盛り上がっているようです。

Instagramのフォロワー数は、ブライトさん(@bbrighttvc)が694.8万人、ウィンさん(@winmetawin)が501.5万人と世界的に人気です(フォロワー数は2021年4月19日時点)。

BLを描く本作は、2人のことを示す愛称として「サラタイ(サラワット+タイン)」や、役名ではなく俳優の名前を用いた「Brightwin(ブライト+ウィン)」という単語が生み出され、ファンの間で使われているのもツイート数が増えた要因の1つです。

(2)高まるBL作品への注目(ツイート数:91,980件)
前述のとおり、Rakuten TVの上記ランキングに入っているタイドラマの3つは、全てBL作品。

タイのBL作品は、同性愛や性別に関して誇張して表現したり、過度に主張したりするのではなく、日常のひとつとして男性2人のラブストーリーを描いていることが視聴者からの好感を得ているポイントです。

日本におけるBL作品(ドラマ)というと、2016年にテレビ朝日で放送された「おっさんずラブ」が記憶に新しく、こちらもX(旧Twitter)世界トレンド1位になるほど話題になりました。その後、同性愛カップルによる料理漫画「きのう何食べた?」が2019年にテレビ東京でドラマ化され人気に。

このように、日本は2010年代後半からBL作品がブームになっていたことが、タイのBL作品の人気に影響を与えていると考えられます。

ちなみに、「きのう何食べた?」作者のよしながふみの代表作「西洋骨董洋菓子店」がタイで実写ドラマ化されることが決まり、情報が発表された2020年12月3日にXのトレンドに入るほど期待を集めています。

日本の作品がタイでドラマ化・映画化され、日本国内で話題になったり、またはその逆が行われたりと、これから両国のエンタメの交流が盛んになっていくのではないでしょうか。

タイドラマ人気の影響は語学にも

2020年に入って「タイ語を学びたい」ツイートが急増したことも分かりました。ツイート内容を見るとタイドラマに夢中になった人たちを中心にタイ語の学習欲が高まっており、ドラマによる影響の大きさが伺えます。

「タイ語」と「学びたい」「勉強中」などのオーガニックツイートを集計/集計期間:2018年4月1日~2019年3月31日、2019年4月1日~2020年3月31日、2020年4月1日~2021年3月31日/データ元:ソーシャルリスニングツール「ブームリサーチ

タイドラマの人気が広がるほど、タイ語の学習意欲が高まり、これまで以上にタイに関する情報の流通速度が上がる可能性も考えられます。タイ語のツイートなど、ソーシャルメディアでタイ語を目にする機会が増えるかもしれません。

食欲も美意識も刺激! タイ料理とタイコスメが人気

「タイ」が人気の理由は「タイドラマ」だけでなく、「タイ料理」や「タイコスメ」も挙げられます。

東京都内におけるタイ料理専門店は793軒(食べログ「タイ料理」ジャンル検索結果)と、ベトナム料理専門店の293軒(食べログ「ベトナム料理」ジャンル検索結果)を比べるとタイ料理専門店が3倍近く多く、その人気とニーズの高さが伺えます(検索結果は2021年3月30日時点)。

外食で楽しむことのできるタイ料理ですが、3年間のツイート数を見てみると、タイ料理を家庭で楽しむ人(内食)が増えていました。

「タイ料理」や「トムヤムクン」などの料理名と、外食を指す「食べに行きたい」「レストラン」、内食を指す「つくる」「手作り」などのオーガニックツイートを集計/集計期間:2018年4月1日~2019年3月31日、2019年4月1日~2020年3月31日、2020年4月1日~2021年3月31日/データ元:ソーシャルリスニングツール「ブームリサーチ

2020年は家庭で過ごす時間が増えたことで、タイ料理を手作りする需要が伸びたと考えられます。

タイ料理のレトルト商品や調味料を多く展開するヤマモリ株式会社は、合わせ調味料「タイクックシリーズ」の「ガパオの素」の2020年3・4月 購入者数が前年比の4~5倍、「カオマンガイの素」は2~2.5倍と大幅に増加しました(DIAMOND Chain Store online/エスニック、「ステイホーム」が追い風に伸長するエスニック料理市場のキーは「家でできる気分転換」/2020年10月28日)。

スーパーで購入できるレトルト食品や調味料の存在もあって、これまで外食で馴染みのあったタイ料理が家庭料理として選べるようになり、より身近になってきています。

また、美容業界では、韓国や中国に続くアジアンコスメのネクストトレンドとしてタイコスメが注目されています。「タイコスメ」のツイート数の推移を見てみましょう。

「タイコスメ」やタイコスメのブランド名などのオーガニックツイートを集計/集計期間:2018年4月1日~2019年3月31日、2019年4月1日~2020年3月31日、2020年4月1日~2021年3月31日/データ元:ソーシャルリスニングツール「ブームリサーチ

2020年は、それまでの5.9倍ほどに増加。タイコスメは2020年から2021年にかけて、日本での取り扱い店舗が増えたことで買いやすくなり、韓国や中国コスメなどのアジアンコスメに感度の高い層が注目しているようです。

雑誌「ViVi」のXアカウントで「プチプラ タイコスメ」が紹介されていることからも、その注目度の高さが伺えます。

また、コスメブランド「Cathy Doll」や「idolo」はタイドラマ「2gether」主演の2人がイメージキャラクターを務めていることで、日本での発売開始前からクチコミが増加。

https://twitter.com/pu_ld0/status/1283360826477342720?s=20&t=KVB-nAYIb2O748mHJUxWbw

新型ウイルスによる感染拡大による影響で減収を余儀なくされたコスメ業界ですが、タイコスメという新たなアジアンコスメはこれからも人気を集め、徐々に定着していくと考えられます。

タイドラマ人気から広がる、タイと日本の交流機会

タイが注目されている理由を探ると

  • タイBLドラマがブームとなり、日本×タイのエンタメ交流が期待される
  • タイ料理の内食化が進み、より身近なものになっている
  • アジアンコスメのネクストブレイクとしてタイコスメが注目されている

ことが分かりました。

韓流ドラマブームは長きにわたって繰り返されており、もはやブーム自体が身近な存在となっていますが、タイドラマブームの勃興は日本のアジアエンタメ文化に新たな風を吹き込んでいると言えるでしょう。

これまで「タイといえば」に当てはまるものが観光スポットや外食、地域などでしたが、新たに内食やコスメ、ドラマが加わり、タイに対して興味を持つきっかけが増えていることが見えてきました。

これにより、観光地や旅行先とされていた国の魅力がアップデートされ、タイへの印象が変わったり、タイのBL作品から同性の恋愛も自然なことだと知る機会を得たり。

タイに限らず、文化や人の交流が盛んになることで、国を越えた相互理解につながり、さらには分断のない世の中になると良いなと思っています。

※オーガニックツイートは、リツイートなどによって拡散されたツイートを除き、一次発信されたツイートのみを指します

髙品 万紀子(たかしな まきこ)
ソー文研 研究員。2020年4月にトライバルへ入社し、プランナーチームに所属。ソーシャルメディア運用からプロモーション、ファンイベント、PRなどの戦略策定や施策のプランニングまでを担当。異文化の探求に熱意を注ぎ、ASEANをこよなく愛する。
@mkmknemuina

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